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2009年6月29日 (月)

谷川雁

 昭和初期、1920年代後半、蟹漁船で展開されていた過酷な労働の実態を描いた小林多喜二の作品『蟹工船』が、ブームと言われて久しいです。派遣労働の、急速な広がりに伴う労働条件の悪化が背景にあると言われています。最近、大きな書店に行きますと谷川雁という詩人の作品集が目立ちます。谷川雁は、戦後の炭鉱を拠点とした労働運動、60年の安保闘争で注目された活動家です。

 忘れられていた谷川雁に再び光が当たりつつある背景は何なのでしょうか。私は、その鍵は、「地方」にあるような気がしてなりません。私は、名前だけは、かろうじて知っていた程度でした。初めて、手にして、拾い読みをしてみますと、ところどころに魂を鋭く突くような言葉があります。

 下部へ 下部へ 根へ根へ 花咲かぬ処へ 暗黒のみちるところへ

 そこに万有の母がある。 (『原点が存在する』)

 東京へゆくな ふるさとを創れ (『東京へ行くな』)

 地方の決して恵まれない、厳しい生活を直視してこそ新たな価値が産まれるという心情がほとばしっているように思います。東京だけが日本ではないという田舎者としての自負も感じ取れます。現在、地方は、経済的に苦しんでいます。こうした事情が、谷川雁の再発見につながっているのではないでしょうか。

 1970年代の大学闘争、学生達を鼓舞した言葉も、谷川雁の作品からでした。

 連帯を求めて孤立を恐れず 

 力を尽くさずして倒れることを拒否する。(『工作者の死体に萌えるもの』)

 時代の大転換期と言われます。谷川雁の言葉、揺さぶられます。特に「連帯を求めて孤立を恐れず」は、格別です。しかし、そうした姿勢をとるためには、自らに原点がなければなりません。また、根拠地となる場所、ふるさとが、ありませんと漂ってしまいます。

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